レトロゲームを PC で遊ぶとき、エミュレーターそのものより「何で管理・起動するか」で体験がまるで変わる。選択肢はいろいろあるが、大きく分けると自分でイチから構築する派と全部入りパッケージをドンと入れる派に分かれる。前者の代表が「EmulationStation Desktop Edition(ES-DE)」、後者の代表が ArcadePunks で配布されている「CoinOPS」だ。
どちらも触ってきた経験をもとに、両者の違いをまとめてみる。CoinOPS シリーズ記事も参照してほしい。
ざっくり結論
| EmulationStation DE | CoinOPS | |
|---|---|---|
| 一言で言うと | 自分で組み立てる高級キット | 開封してすぐ遊べる完成品 |
| 初期セットアップ | やや手間がかかる | ダウンロードして展開するだけ |
| カスタマイズ性 | 非常に高い | 高いが知識が要る |
| 見た目 | テーマ次第で自由自在 | 最初からド派手で格好いい |
| ROM | 自分で用意する | パッケージに含まれる |
| 容量 | 本体は軽量(数百MB) | 数十GB – 数百GB |
| 対応OS | Windows / macOS / Linux | 主に Windows |
| 向いている人 | 自分で環境を組みたい人 | とにかくすぐ遊びたい人 |
EmulationStation DE とは
EmulationStation DE(ES-DE)は、もともと Raspberry Pi 向けに作られた EmulationStation をデスクトップ PC 向けにフォークしたフロントエンドだ。Windows・macOS・Linux に対応しており、RetroPie や Batocera でおなじみのあのインターフェースを PC でも使える。
ES-DE 自体はエミュレーターではない。あくまで「ランチャー(フロントエンド)」であり、実際のゲーム実行は RetroArch や各種スタンドアロンエミュレーターに任せる。つまり ES-DE は「見た目と管理」を担当し、「実際にゲームを動かす部分」は別のソフトが担う構成になっている。
ES-DE の強み
- クロスプラットフォーム — Windows だけでなく Mac や Linux でも同じ操作感で使える。Steam Deck との相性も良い
- テーマが豊富 — コミュニティ製のテーマが大量にあり、見た目を自由にカスタマイズできる。シンプル系からド派手系まで選び放題
- スクレイピング機能 — ScreenScraper や TheGamesDB からゲーム情報・画像・動画を自動取得できる。これだけでライブラリが一気にリッチになる
- 軽量 — 本体は数百 MB 程度。ROM とメディアを除けばほとんど容量を食わない
- RetroArch 統合 — RetroArch のコアを自動検出して、ROM のシステムごとに適切なコアで起動してくれる
- 活発な開発 — オープンソースで定期的にアップデートされている
ES-DE の弱み
- 初期設定に手間がかかる — RetroArch のインストール、コアのダウンロード、ROM フォルダの配置、スクレイピングなど、最初にやることが多い
- ROM は自分で用意する — 当然ながら ROM は付属しない。合法的に自分で吸い出すか、所有ソフトからリッピングする必要がある
- エミュレーターの設定は別途必要 — RetroArch 側のコントローラー設定やシェーダー設定などは ES-DE からは完結しない
CoinOPS とは
ArcadePunks で配布されている、レトロゲームエミュレーターの「全部入りパッケージ」だ。以前の記事でも書いたが、エミュレーター本体、ROM、メディア(動画・画像)、フロントエンドの設定がすべて含まれた状態で配布されている。展開してそのまま起動すれば、数千タイトルのゲームがズラッと並ぶ。
バージョンも複数あり、NEXT、NEXT2、Collections などそれぞれ収録内容やテーマが異なる。中には 400GB を超える超大型パッケージもあり、レトロゲームの総合博物館のような様相を呈している。
CoinOPS の強み
- すぐ遊べる — ダウンロードして展開すれば、そのまま起動できる。エミュレーターの設定も ROM の配置も不要
- 見た目が最初から格好いい — ゲーム選択画面のデモ動画、機種選択のアニメーション、BGM まで作り込まれている。見ているだけで楽しい
- 大量のタイトルが収録済み — 数千から数万タイトルが最初から入っている。「あのゲーム入ってるかな」と探すのも楽しみのひとつ
- アドオンが豊富 — ArcadePunks コミュニティで追加パックが配布されている
- アーケード筐体との相性 — そもそもアーケード筐体(キャビネット)に入れて使うことを想定しているため、コントローラー設定やフルスクリーン表示が最適化されている
CoinOPS の弱み
- ダウンロードが大変 — 数十 GB から数百 GB のファイルを TORRENT でダウンロードする必要がある。回線環境によっては数日かかることも。ダウンロード方法はこちら
- カスタマイズが難しい — 格好いい反面、自分好みに変更しようとすると途端に敷居が上がる。設定ファイルの構造を理解する必要があり、日本語の情報もほぼない
- Windows 限定 — 基本的に Windows 環境前提。Mac や Linux では動かない
- ストレージを圧迫する — 全部入りの代償として、SSD や HDD の容量をかなり消費する
- 法的なグレーゾーン — ROM が同梱されているため、所有していないソフトが含まれる場合は法的にアウトになり得る。この点は各自の判断と責任
- エミュレーターのバージョンが古い場合がある — パッケージ作成時点のエミュレーターが同梱されるため、最新の改善や互換性向上が反映されていないことがある
詳細比較
セットアップ
ES-DE は「自分で全部やる」スタイルだ。本体をインストールし、RetroArch とコアをセットアップし、ROM フォルダにゲームファイルを配置し、スクレイピングでメディアを取得する。慣れれば1〜2時間で完了するが、初めてだと半日くらいかかる人もいる。
CoinOPS は「ダウンロードして展開して起動」で終わる。ただしダウンロード自体に時間がかかる。100GB のファイルを落とすのに回線次第では丸一日。展開にも時間がかかる。でもその後は何も設定しなくていい。
というか、公式サイトに動画付きで親切に説明してくれている。英語だけど。
| 工程 | ES-DE | CoinOPS |
|---|---|---|
| ダウンロード | 数分(本体 + RetroArch) | 数時間 – 数日(TORRENT) |
| 初期設定 | 1〜2時間(ROM配置・スクレイピング) | ほぼ不要 |
| すぐ遊べるか | 設定完了後から | 展開直後から |
見た目・UI
ES-DE はテーマ次第だ。デフォルトテーマはシンプルで実用的だが、地味と感じる人もいる。ただしコミュニティテーマを入れれば印象はガラリと変わる。「Art Book Next」や「Carbon」などの人気テーマはかなり洗練されている。
CoinOPS は最初から「魅せる」ことに全振りしている。機種選択画面のアニメーション、各ゲームのプレビュー動画、BGM の演出。正直、これを見ていると「ゲームやるよりこの画面を眺めていたい」と思うことすらある。以前の記事にも書いたが、見ているだけで満足できちゃうくらい良い。
対応システム(エミュレーター)
ES-DE は RetroArch のコアを利用するため、対応システムの幅は非常に広い。ファミコンからPS2、アーケード、レトロPC まで、RetroArch が対応しているものはほぼすべてカバーできる。さらにスタンドアロンエミュレーター(PCSX2、Dolphin、RPCS3、Xenia など)との連携も可能だ。
CoinOPS もバージョンによって対応範囲は異なるが、主要なレトロゲーム機はだいたいカバーしている。ただし、PS2 以降の比較的新しいハードや、Xenia(Xbox 360エミュレーター)のような最新のエミュレーターは含まれていないことが多い。
アップデートと将来性
ES-DE はオープンソースで継続的に開発されている。バグ修正、新機能追加、新システム対応が定期的にリリースされる。RetroArch 側のコアアップデートも独立して行える。
CoinOPS はコミュニティベースで、新バージョンが出るタイミングは不定期だ。パッケージ単位でのリリースになるため、「最新のエミュレーターだけ更新」といった部分的なアップデートは自分でやる必要がある。そのやり方も別の記事で触れている。
どちらを選ぶべきか
ES-DE を選ぶべき人
- 自分のライブラリを自分で管理したい
- Mac や Linux、Steam Deck でも使いたい
- エミュレーターは常に最新版を使いたい
- 法的にクリーンな環境を維持したい(自分で吸い出した ROM のみ使用)
- ストレージに余裕がない
CoinOPS を選ぶべき人
- 細かい設定はしたくない、とにかくすぐ遊びたい
- 見た目の演出を重視する
- アーケード筐体に入れて使う予定がある
- Windows 環境で、ストレージに余裕がある
- レトロゲームの「博物館」的な体験がしたい
併用という選択肢
実は「どちらか一方」に絞る必要はない。CoinOPS をメインのお手軽環境として使いつつ、ES-DE で自分だけのカスタムライブラリを育てるという併用も全然ありだ。CoinOPS に入っていない新しいハードのゲームは ES-DE + 最新エミュレーターで遊ぶ、という使い分けが現実的かもしれない。
まとめ
| 観点 | ES-DE | CoinOPS |
|---|---|---|
| 手軽さ | ★★ | ★★★★★ |
| カスタマイズ性 | ★★★★★ | ★★★ |
| 見た目の初期完成度 | ★★★ | ★★★★★ |
| 対応ハードの広さ | ★★★★★ | ★★★★ |
| 将来のメンテナンス性 | ★★★★★ | ★★ |
| 法的な安心感 | ★★★★★ | ★★ |
| 容量の軽さ | ★★★★★ | ★ |
ES-DE は「自分だけのレトロゲーム環境を育てる楽しさ」、CoinOPS は「開封した瞬間のワクワク感と圧倒的な物量」が魅力だ。どちらも素晴らしいプロジェクトであり、レトロゲームファンなら両方触ってみることをおすすめする。
個人的には、最初に CoinOPS で「レトロゲームフロントエンドってこんなに格好いいのか」と感動してから、ES-DE で自分好みの環境を構築していく——というステップが一番楽しいかも知れない。


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