ファミコン、スーファミ、PS1、GBA、メガドライブ……レトロゲームを遊ぶためのエミュレーターは機種ごとに別々のアプリが必要で、それぞれUIも設定方法もバラバラ。管理が面倒で仕方ない。
RetroArchはその問題を一発で解決するフロントエンドだ。ひとつのアプリの中に「コア」と呼ばれるエミュレーターエンジンを追加していくことで、数十種類のハードを統一UIで遊べる。しかもシェーダー(画面フィルター)、セーブステート、巻き戻し機能など、個別エミュレーターでは対応していない便利機能が標準装備されている。
この記事では、RetroArchのインストールからコアの導入、コントローラー設定、シェーダーの適用まで一通り解説する。CoinOPSやEmulationStation DEとの使い分けはCoinOPS vs EmulationStation DE 比較を、Steam Deckでの活用はSteam DeckにGE Protonをインストールするも参考にしてほしい。
RetroArchとは
RetroArchはlibretroプロジェクトが開発するオープンソースのマルチプラットフォームエミュレーターフロントエンドだ。RetroArch自体はエミュレーターではなく、「コア」と呼ばれるエミュレーターエンジンを読み込んで動かす器にあたる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発元 | libretroチーム(オープンソース) |
| 対応OS | Windows, macOS, Linux, Android, iOS, Steam Deck, Switch, PS Vita, 他多数 |
| 価格 | 無料 |
| 対応ハード数 | 80以上(コア次第) |
| ライセンス | GPL v3 |
RetroArchの強み
- 統一UI: どのハードも同じ操作感で遊べる
- セーブステート: いつでもどこでもセーブ&ロード
- 巻き戻し(Rewind): ミスったら数秒巻き戻せる
- シェーダー: ブラウン管風フィルター、スムージングなどを自由に適用
- ネットプレイ: オンラインで対戦・協力プレイ
- 実績(Achievements): RetroAchievementsと連携してトロフィー的な楽しみ方
- クロスプラットフォーム: PC、スマホ、携帯ゲーム機まで同じ設定が使い回せる
インストール
Windows
公式サイトからインストーラー版またはポータブル版(ZIP)をダウンロードする。Steamからもインストール可能だ。
| 配布形態 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| インストーラー版 | スタートメニューに登録、自動更新 | アンインストールが必要 |
| ポータブル版(ZIP) | USBメモリで持ち運べる、環境を汚さない | 手動更新 |
| Steam版 | Steam UIから起動、Big Pictureモード対応 | コアの追加がやや制限的 |
おすすめはポータブル版。フォルダごとバックアップやコピーができるので管理が楽だ。
Android
Google Playからインストールできる。64ビット版(RetroArch64)も別途あるので、最近の端末なら64ビット版を入れた方がパフォーマンスが良い。F-Droidからも入手可能だ。
Steam Deck / Linux
Steam Deckの場合はデスクトップモードでFlatpak版をインストールするのが一般的だ。
# Flatpak(Steam Deck / Linux共通)
flatpak install flathub org.libretro.RetroArch
# Ubuntu / Debian
sudo add-apt-repository ppa:libretro/stable
sudo apt update
sudo apt install retroarch初期設定
ディレクトリ構成を理解する
RetroArchを使いこなすには、まずディレクトリ構成を把握しておくのが大事だ。
| ディレクトリ | 中身 |
|---|---|
cores/ | エミュレーターコア(.dll / .so) |
system/ | BIOS ファイル |
saves/ | インゲームセーブ(SRAMなど) |
states/ | セーブステート |
thumbnails/ | ゲームのサムネイル画像 |
playlists/ | プレイリスト(.lpl) |
shaders/ | シェーダープリセット |
config/ | コアごとの設定オーバーライド |
BIOSファイルの配置
PS1、GBA、セガサターンなど一部のコアはBIOSファイルがないと動作しない。必要なBIOSを system/ フォルダに配置する。
主要なBIOSファイル:
| ハード | ファイル名 | 必須/任意 |
|---|---|---|
| PS1 | scph5501.bin(北米)等 | 必須 |
| GBA | gba_bios.bin | 任意(なくても動くが互換性向上) |
| セガCD | bios_CD_U.bin 等 | 必須 |
| セガサターン | saturn_bios.bin | 必須 |
| PCエンジンCD | syscard3.pce | 必須 |
| Nintendo DS | bios7.bin, bios9.bin, firmware.bin | コアによる |
BIOSが正しく配置されているかは、メインメニュー →「情報」→「コア情報」から確認できる。ファイル名やハッシュが一致していればチェックマークが付く。
コアのインストール
RetroArchのメインメニュー →「コアをロード」→「コアのダウンロード」から、必要なコアをインストールする。主要なおすすめコアは以下の通り。
| ハード | おすすめコア | 特徴 |
|---|---|---|
| ファミコン(NES) | Mesen | 精度最高、TASレベルの正確さ |
| スーファミ(SNES) | bsnes | 高精度。軽さ重視なら Snes9x |
| ゲームボーイ / GBC | Gambatte | 安定・高互換 |
| GBA | mGBA | 精度・速度のバランス最良 |
| メガドライブ | Genesis Plus GX | セガCD/マスターシステムも対応 |
| PS1 | Beetle PSX HW | ハードウェアレンダリングで高解像度化可能 |
| N64 | Mupen64Plus-Next | 互換性改善が進んでいる |
| Nintendo DS | melonDS | Wi-Fi対応、高互換 |
| PSP | PPSSPP | 高解像度レンダリング対応 |
| アーケード | FinalBurn Neo | CPS1/2/3、ネオジオなど幅広くカバー |
| PCエンジン | Beetle PCE | CD-ROM2も対応 |
同じハードに複数のコアがある場合、精度と速度のトレードオフで選ぶ。スペックに余裕があるPCなら高精度コア、スマホや低スペック機なら軽量コアを選ぼう。
コントローラーの設定
基本設定
コントローラーをPCに接続した状態で、「設定」→「入力」→「ポート1コントロール」からボタンをマッピングする。Xbox系やPS系のコントローラーはWindows/Androidなら接続するだけで自動認識されることが多い。
ホットキーの設定
RetroArchの操作で最も重要なのがホットキーだ。ゲームプレイ中にメニューを開いたりセーブステートを使ったりするのに必須。
| 機能 | 推奨設定(Xboxコントローラー例) |
|---|---|
| ホットキー有効化 | Selectボタン(Viewボタン) |
| メニュー切り替え | ホットキー + スタート |
| セーブステート保存 | ホットキー + R1 |
| セーブステート読込 | ホットキー + L1 |
| ステートスロット+ | ホットキー + 十字キー右 |
| ステートスロット- | ホットキー + 十字キー左 |
| 早送り | ホットキー + R2 |
| 巻き戻し | ホットキー + L2 |
| スクリーンショット | ホットキー + B |
| ゲーム終了 | ホットキー + Startを長押し(またはメニューから) |
ホットキーは「ホットキー有効化ボタンを押しながら別のボタンを押す」という2ボタン同時押し方式。これによりゲーム中の誤操作を防いでいる。
コアごとにコントローラー設定を変える
PS1のコアではアナログスティック対応にしたい、SNESのコアではL/Rの配置を変えたい、といった場合はコアごとのオーバーライドを使う。
ゲーム起動中にメニューを開き、「コントロール」で設定を変更した後、「コントロールのオーバーライドを保存」→「コアのオーバーライドを保存」を選ぶ。これでそのコアを使うときだけ設定が切り替わる。
シェーダー(画面フィルター)の設定
RetroArchの華とも言える機能。レトロゲームの粗いドット絵を、ブラウン管テレビ風のスキャンラインや滑らかなフィルターで美しく表示できる。
シェーダーの適用方法
- ゲーム起動中にメニューを開く
- 「シェーダー」→「シェーダープリセットをロード」
- 好みのプリセットを選択
- 気に入ったら「シェーダープリセットを保存」→「コアプリセットを保存」で自動適用にできる
おすすめシェーダー
| シェーダー | 見た目 | 負荷 | おすすめ用途 |
|---|---|---|---|
| crt-royale | 本格ブラウン管再現(曲面、蛍光体、ブルーム) | 高い | PCでじっくりプレイ |
| crt-geom | ブラウン管風(軽量) | 中程度 | バランス重視 |
| zfast-crt | シンプルなスキャンライン | 低い | スマホ、低スペック機 |
| crt-lottes | Timothy Lottes氏のCRTシェーダー | 中程度 | 2D全般 |
| xbrz | ドット絵を滑らかにスケーリング | 中程度 | 高解像度でクッキリ表示したい人 |
| mega-bezel(Duimon) | CRT + ベゼル(テレビの枠)再現 | 非常に高い | 雰囲気最重視、GPUパワーがある環境 |
まずは crt-geom あたりから試してみるのがおすすめ。重すぎず、それでいてドット絵が一気にいい雰囲気になる。
シェーダーのパラメータ調整
プリセットを適用した後、「シェーダーパラメータ」から細かく調整できる。よく調整する項目:
| パラメータ | 効果 |
|---|---|
| CRT Curvature | ブラウン管の画面の丸み |
| Scanline Intensity | 走査線の濃さ(0で無効、1で最大) |
| Mask Type | 蛍光体マスクの種類(Aperture Grille、Shadow Maskなど) |
| Brightness | 全体の明るさ |
| Sharpness | シャープネス(xbrz系で効果大) |
プレイリストの作成
ROMが増えてくると、プレイリストで整理したくなる。RetroArchにはROMをスキャンしてプレイリストを自動生成する機能がある。
- メインメニュー →「コンテンツをインポート」→「ディレクトリをスキャン」
- ROMが保存されているフォルダを選択
- RetroArchがROMのハッシュをデータベースと照合してプレイリスト(.lplファイル)を生成
スキャンで検出されないROMは「手動スキャン」から追加できる。手動スキャンではデフォルトコアの指定もできるので、プレイリストからワンクリックで起動する環境が作れる。
サムネイルのダウンロード
プレイリスト作成後、「サムネイルのアップデータ」からゲームのスクリーンショットやボックスアートをダウンロードできる。これを入れるとゲーム選択画面が一気にリッチになる。
便利機能
巻き戻し(Rewind)
「設定」→「フレームスロットリング」→「巻き戻し」をONにすると、ゲームプレイ中にリアルタイムで巻き戻しができるようになる。アクションゲームで死んだ瞬間に数秒戻してやり直せる、チート級の機能だ。
ただし常時ステートを記録し続けるため、CPU負荷とメモリ使用量が増える。16ビット世代以前なら問題ないが、PS1以降のハードでは動作が重くなることがある。
早送り(Fast Forward)
RPGのレベル上げやムービースキップに便利。ホットキー + R2(デフォルト)で倍速再生になる。速度の上限は「設定」→「フレームスロットリング」→「早送りレート」で変更可能(0で無制限)。
RetroAchievements
RetroAchievementsはレトロゲームにトロフィー/実績を追加するコミュニティ主導のプロジェクト。RetroArchに組み込まれているので、アカウントを作成してログインするだけで使える。
「設定」→「実績」→「実績を有効化」をONにし、ユーザー名とパスワードを入力すればOK。ゲームプレイ中に条件を達成すると画面に通知が表示され、なかなか達成感がある。
ネットプレイ
同じコア・同じROMを持つ相手とオンラインで対戦・協力プレイができる。「ネットプレイ」→「ネットプレイホストを開始」でホスト、相手は「ネットプレイルームに接続」から参加する。ラグに敏感なゲームには厳しいが、格ゲーやパズルゲームならなかなか遊べる。
パフォーマンス調整
| 症状 | 対策 |
|---|---|
| ゲームがカクつく | ビデオドライバーを「gl」→「vulkan」に変更 / 軽量コアに切り替え |
| 音が途切れる | 「オーディオ」→「同期」をON、レイテンシーを128〜256に調整 |
| 入力遅延が気になる | 「ビデオ」→「ハードウェア同期」をON、「入力」→「入力ポーリング」を「早い」に |
| PS1/N64が重い | 内部解像度を下げる / HWレンダリングで試す |
| シェーダーが重い | 軽量シェーダー(zfast-crt等)に変更 |
RetroArch vs スタンドアロンエミュレーター
「全部RetroArchでいいのでは?」と思うかもしれないが、ハードによってはスタンドアロン版の方が優れている場合もある。
| ハード | RetroArchコア | スタンドアロン | どちらが良い? |
|---|---|---|---|
| PS2 | 対応なし | PCSX2 | スタンドアロン一択 |
| GameCube / Wii | Dolphin(コア版) | Dolphin | スタンドアロンの方が安定 |
| 3DS | Citra(コア版) | Citra / Lime3DS | スタンドアロンの方が機能豊富 |
| PS1 | Beetle PSX HW | DuckStation | どちらも優秀、好みで |
| SNES | bsnes / Snes9x | bsnes | RetroArchで十分 |
| GBA | mGBA | mGBA | RetroArchで十分 |
| アーケード | FinalBurn Neo | MAME | MAMEの方がROM対応数は上 |
ざっくり言えば、16ビット世代以前はRetroArchが最適、PS2以降の3D系はスタンドアロンの方が良いことが多い。
まとめ
RetroArchは設定項目が多くて最初は面倒に感じるかもしれないが、一度セットアップしてしまえば、あらゆるレトロゲームを統一環境で快適に遊べる。特にセーブステート、巻き戻し、シェーダーの3つは一度使うと手放せなくなる。
最初のステップとして、まずはRetroArchをインストールし、1つコアを入れて手持ちのROMを動かしてみよう。それだけで「なるほど、これは便利だ」と実感できるはずだ。慣れてきたらシェーダーを弄ったり、RetroAchievementsを有効にしたりして、レトロゲームライフを充実させてほしい。

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