ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて レビュー — シリーズ全部やってきた者が辿り着いた、王道JRPGの到達点

ドラクエシリーズはⅦ以外は一通りエンディングまで到達してきた身としては、本作も「ごく当たり前の様に購入しプレイする」一本だった。ナンバリングタイトルは何があってもとりあえず触れる — そういう存在として、ドラクエは長年生活の一部になっている。だからⅪも特別な意気込みで構えたわけではなく、ごく自然にディスクをセットした。

序盤、世界観にはやや幼さを感じた。だが「これがドラクエだ」と受け入れて旅を進めるうちに、個性的なキャラクターたちとの関係性が深まり、お決まりかと思った展開から「おお!?」という意外性が顔を出し、期待を上回るストーリーに何度も引き込まれていった。やり込み要素も盛りだくさんで、ストレス軽減のための快適仕様も多数。気付けばどっぷりたっぷりとドラクエⅪの世界に魅了され、時間を忘れて遊んでいた。

この記事ではドラクエⅪ(過ぎ去りし時を求めて/S)を、シリーズ完走勢の視点でレビューする。ストーリーやキャラクターの魅力、トロコンの実情、PC版で使えるMOD情報まで網羅しているので、これから始めるか迷っている人にも、すでにクリア済の人にも参考になるはずだ。

ゲーム情報

タイトルドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて / 過ぎ去りし時を求めて S
プラットフォームPS4 / 3DS / Steam(2017)/ Switch(2019 S版)/ PS4 / Xbox One / Windows 10 / Steam(2020 S マルチ版)
発売日2017年7月29日(原版)/ 2019年9月27日(Switch S版)/ 2020年12月4日(S マルチプラットフォーム版)
開発元 / 発売元スクウェア・エニックス(外注スタジオはアーマー・プロジェクト、シリエル、トイロジック、オルカ)
ジャンルロールプレイングゲーム(コマンド式 RPG)
Metascore91(PS4 原版)/ 93(Switch S版)
OpenCritic91 / Mighty(PS4 原版)
HowLongToBeat(メイン)約57.5時間(S 版)
HowLongToBeat(完全)約129時間(S 版)
トロコン難易度4 / 10(長さは厳しいが詰みポイントは無い)
トロコン平均時間約120時間
プレイ時間100時間超(時間を忘れて没頭)
完了状況トロコン済
自分の評価10 / 10

ゲーム概要

ドラゴンクエストⅪは、堀井雄二・鳥山明・すぎやまこういちの黄金トリオによる王道RPGの現代的集大成だ。”勇者の証” を背負った主人公が、世界に蔓延る “悪魔の子” の汚名を晴らしつつ、ロトゼタシアの命運を懸けた戦いに身を投じていく。物語の根幹は古典的だが、シナリオ展開・キャラクター造形・世界観の作り込みは過去シリーズと比べても群を抜いて緻密で、特にゲーム後半に訪れる “ある仕掛け” は、ドラクエファンに鳥肌を立てさせる演出が用意されている。

戦闘システムはターン制コマンドバトルを踏襲しながら、3Dフィールドを動き回ってのフリーカメラ、必殺技ゲージ「ゾーン」と仲間との合体技「れんけい」、装備生成の「ふしぎな鍛冶」、スキルパネル式の育成など、現代的なシステムが多数組み込まれている。Switch版以降の「S」では2Dモードへの自由な切り替え、馬や敵に変身できるイベント、キャラクターごとの過去エピソード追加など、さらにボリュームと遊びやすさが上乗せされた決定版仕様となっている。

世界中の評判まとめ

評価は国内外問わず高い。Metacriticスコアは PS4 原版で 91、Switch の S 版に至っては 93 をマークしており、ドラクエシリーズの中でも歴代上位のスコアを叩き出している。海外メディア(IGN、Eurogamer、Polygon 等)も「ドラクエに馴染みがなかった海外プレイヤーにも刺さる、王道JRPGの到達点」と評価しており、日本国内では「シリーズの集大成」「Ⅷ以降のドラクエの正統進化」と語られることが多い。

ファミ通のクロスレビューは満点続出。同誌はS版についても再評価レビューを掲載し「ユーザビリティが大幅向上したことで、原版を遊んだプレイヤーすら100時間超えの再プレイで虜になる」と紹介している。プレイヤー評価は「ストーリーが熱い」「BGMが胸に響く」「終盤の展開で泣いた」といった感情系の声が圧倒的に多く、評価軸が “良くできたRPG” を超えて “心に残る体験” に寄っているのが特徴的だ。

批判らしい批判は「Act 3 が長い」「サブクエストの量がやや過剰」くらい。これは裏を返せばボリュームが豊富という長所でもあり、ネガティブな評価がほとんど見当たらない異例の作品だ。

実際にプレイしてみた感想

正直に書くと、最初に「世界観がやや幼いな」と感じた。村人のセリフ、キャラのデザイン、明るすぎる色味のフィールド — ドラクエの王道路線を踏まえると当然なのだが、いきなり大人向けの陰鬱な雰囲気を期待していると軽く拍子抜けする部分はある。でもすぐに「ああ、これがドラクエなんだ」と切り替わって、それからは違和感もなくスッと世界に入れた。

個性的なキャラクターたちとの旅が始まると、印象はガラッと変わる。槍使いのマルティナ、物理と魔法の二刀流のロウ、純朴な盗賊カミュとマヤ、機転の効くシルビア、双子のセーニャ・ベロニカ — それぞれにきちんとバックストーリーがあり、旅を進めるごとに彼らの存在感が増していく。お決まりかと思った王道展開のなかに「おお!?」と声が出る意外な仕掛けが何度も挟み込まれていて、期待をしっかり超えるストーリーが用意されている。S版で追加されたキャラ別過去エピソードを通すと、特にカミュ姉弟やベロニカ・セーニャの双子の物語は涙腺が緩む。「ドラクエの仲間キャラがここまで描かれる時代になったか」という感慨が湧いた。

本作最大のフックは Act 2 終盤から始まる “ある仕掛け” だ。詳述はネタバレになるので避けるが、ドラクエファンを長年やっている人ほど、この瞬間に「やられた」と声が出るはずだ。シリーズの積み重ねを、これでもかと正面から使った演出で、初代からⅧまで遊んできたプレイヤーへのご褒美のような場面が用意されている。ここに辿り着いたとき、堀井雄二というシナリオライターの腕前を改めて思い知った。

戦闘や育成、フィールド探索のあちこちにストレス軽減のための仕様が散りばめられているのも好印象。”ふしぎな鍛冶” は最初こそ面倒に感じたが、ミニゲームとして手応えがあり、武器が +3 になった瞬間のリターンがちゃんと気持ちいい。スキルパネルでの育成は自由度が高く、戦闘では「ゾーン」と「れんけい」で派手な見せ場が用意される — システム面の細かい設計が、長丁場でも飽きを抑える側に効いている。

音楽もすぎやまこういちの遺作的な完成度で、序曲が流れた瞬間から「これだよ、これ」と勝手に背筋が伸びる。フィールド曲、戦闘曲、町の曲、すべてが場面と完璧に噛み合っており、特にラスボス戦の交響的な盛り上がりは、シリーズ屈指の名場面と言っていい。やり込み要素も盛りだくさんで、気付けばどっぷりたっぷりとⅪの世界に没頭していた。時間を忘れて遊ばされる類のゲームだ。

実際のプレイ時間

HowLongToBeatのメイン平均は約57時間、完全クリアで約129時間。本作はAct 1 / Act 2 / Act 3 の三幕構成になっていて、Act 2 で「これでエンディングか」と思った直後にAct 3 が始まる構造のせいで、思った以上に時間が溶ける。サブクエストや特技獲得のための「試練」「クエスト報酬」を全部やろうとすると、トロコンを意識せずとも100時間は普通に超える。

個人的にも、寄り道込みで気付いたら100時間超え。ドラクエは長く居座って熟成させるゲームで、本作はその「長く居座る」価値が間違いなくある作品だ。100時間が「気がついたら過ぎていた」と感じられるなら相性は良い。

トロコンについて

PSNProfilesでのトロコン難易度評価はおおむね 4 / 10。詰みポイントが無く、「ひたすら長い」が「難しくない」タイプのトロコンだ。プラチナ取得までの平均時間は約120時間。時限トロフィーが無いので気持ちはかなり楽で、これだけでもストレスの大半が消える。

とはいえ、油断しているとハマる落とし穴はいくつかある。代表格は恒例の「ちいさなメダル集め」。攻略サイトなどを活用し、どこのメダルを取ったかチェックしながら進めるのが鉄則だ。毎回そうなのだが、前半でチェックを面倒くさがって後回しにすると、後で「あの町どこ取ったっけ?」「あのダンジョン回収済みだったか?」と地獄のチェック潰しが待っている。今回も例に漏れずやられた。

同じく要注意なのが「ボウガンマスター」と「アイテムマニア」系のトロフィー。どちらも「広い世界のあちこちに点在するアレを全部撃つ/集める」系で、事前に何を取ったかメモしていないと終盤での確認作業が果てしなくなる。ボウガンの的、アイテム図鑑の取り逃し、装備カタログの未取得 — このあたりは軽く事前チェックを入れておくだけで、無駄なロスがかなり抑えられる。

その他、Act 3 でしか挑めない高難度試練群があり、ここは「全員レベル99 + 最強装備 + 連携をしっかり組む」前提なので、無策で挑むとフルボッコにされる。しっかり準備して臨めば突破できるバランスになっており、「やればやっただけ報われる」気持ちよさがある。

総じて、トロコンの過程自体が “ご褒美” になり得る作品。サブクエスト、鍛冶レシピ集め、馬レース、カジノ — どれもただの作業に終わらず、世界観や脇役キャラの掘り下げに自然と繋がっている。トロコン作業中に何度も「あ、このキャラ良いな」と発見があるのが、ドラクエⅪならではの体験だ。

MODについて(PC版限定)

PC版(Steam)ならMODで遊びの幅を広げられる。ドラクエⅪは英語コミュニティを中心にそれなりにMODが作られていて、Nexus Modsを覗くとなかなか興味深いラインナップが揃っている。

  • 画質向上系 — 最もよく使われるカテゴリ。テクスチャ高解像度化、シェーダー改善、ReShade プロファイルなど。S版でも特定の場面が低解像度のまま残っているので、PC で遊ぶならこれは入れ得
  • 取得量ブースト系 — 経験値、ゴールド、アイテム取得率を底上げするMOD。トロコン作業の高速化やレベル上げの苦痛軽減に有効
  • ふしぎな鍛冶ミニゲーム回避&+3確定MOD — ミニゲームをスキップして必ず +3 で完成させてくれる超便利系。トロコン時に大量の装備生成が必要なので、これがあるだけで体感の作業量が桁違いに減る
  • Ultimate Equipment — 50種類以上の武器・装備を新規追加するMOD。見た目バリエーションと選択肢が大幅に増える
  • Spellcaster Hero — 主人公を強力な魔法使いに変身させ、たくさんの新呪文とアビリティを追加。剣士寄りの主人公を魔法職寄せにしたい人向け
  • Hidden Areas — ルーラ(瞬間移動)で行ける場所を大幅に増やすMOD。隠しエリアや本来は徒歩でしか辿り着けない場所への移動が快適になる

ドラクエⅪは元から完成度が高いので「MOD無しが正解」と感じる人もいるはず。しかし、2周目や3周目をやる場合、ふしぎな鍛冶のミニゲーム回避 + 取得量ブーストを入れるだけでもプレイテンポが激変するので、再プレイ勢には特に試してほしいところだ。

総評

トロコンを目指すと少し面倒な要素は多いが、内容的にはストーリーが想像以上に良く、システムも良くできていた。クリア時の満足感はかなりのもので、エンディングを見終わった後しばらくはストーリーの振り返りの余韻に浸れる。「もう一度遊びたいか」と問われたら、即答で「Yes」と答えられる類の作品だ。

長年シリーズを追ってきた身としても、ここまで満足度の高いナンバリングはⅧ以来ではないかと思える。100時間以上の物量に怯む必要はない。ドラクエは長く居座って遊ぶゲームで、本作はその「長く居座る」価値が間違いなくある。

こんな人におすすめ

  • ドラクエシリーズを過去作で遊んできたファン全般。”あの仕掛け” の衝撃は是非体験すべき
  • 長編RPGにじっくり腰を据えたい人。100時間級だが、退屈な単純作業はほぼ無い
  • トロコンを苦行ではなく “やり込みの過程として楽しみたい” 人。時限トロフィー無しは精神的に超ラク
  • キャラクターの内面に踏み込んだストーリーを求める人。S版の追加エピソードは見もの
  • クリア後に余韻に浸れるゲームを探している人。エンディング後しばらく動けなくなるタイプの作品

逆に、短時間でサクサク進むモダンなアクションRPGを好む人や、テンポ重視のスタイルの人には、序盤の “じれったさ” や世界観の幼さが引っかかるかもしれない。だが、第一作からの伝統を踏襲しているだけのことで、それも含めて “ドラクエらしさ” だ。慣れて、味わって、後半の展開と音楽に身を委ねる — そういう遊び方こそ、本作の真価を引き出す道筋だと思う。

これから始めるなら、迷わず「S」のマルチプラットフォーム版を選ぶといい。原版に対して 2D/3D モード切替、追加エピソード、ユーザビリティ改善が全部入っており、文字通りの “決定版” だ。

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