Arch Enemy「Burning Bridges」 — Johan Liiva時代の最高傑作と日本版ライブ盤の奇跡

Burning Bridges

Arch Enemyというバンド名を聞いたとき、あなたはどの時代を思い浮かべるだろうか。

2000年代以降にメタルに触れた人であれば、女性ヴォーカルのAngela GossowやAlissa White-Gluzの姿が浮かぶかもしれない。だが自分にとってArch Enemyといえば、1999年の「Burning Bridges」、そしてJohan Liiva時代のあのサウンドだ。

このアルバムは今でも定期的に聴き返す。それだけの力がある。

Michael Amottという男 — CarcassからArch Enemyへ

Arch Enemyを語るにはギタリストでありバンドの創設者、Michael Amottを外せない。

Amottはもともと英国のデスメタル/グラインドコアバンドCarcassのギタリストだった。Carcassは「Heartwork」(1993年)でメロディック・デスメタルの礎を築いたバンドのひとつで、そこでAmottは美しいリードギターと凶暴なリフを融合させる術を磨いた。

Carcass解散後、Amottは故郷スウェーデンに戻りArch Enemyを結成。1996年のデビュー作「Black Earth」から始まり、「Stigmata」(1998年)、そして「Burning Bridges」(1999年)へと続く3枚は、ヨーテボリ・サウンドとNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)のエッセンスを融合させた独自のスタイルを確立していく過程だ。

弟のChristopher Amottもギタリストとして参加し、兄弟ならではのツインリードが初期Arch Enemyの象徴的なサウンドを形成していた。

ヨーテボリのもう一つの顔

「Burning Bridges」もAt The Gates「Slaughter of the Soul」と同様、ヨーテボリのFredman StudioでFredrik Nordstromがプロデュースしている。

興味深いのはドラマーだ。Daniel Erlandssonが叩いているが、彼はAt The GatesのAdrianと兄弟である。同じスタジオ、同じプロデューサー、兄弟のドラマー。ヨーテボリという街の狭くて濃密な音楽コミュニティがここにも現れている。

サウンドはAt The Gatesよりもクリーンで整然としており、Michaelのクラシック・メタル趣味が色濃く反映されている。ヘヴィさの中にメロディーとハーモニーが溢れ、ギターソロは美しく流麗だ。

Johan Liivaというヴォーカリスト

Johan Liivaの声は、後任のAngela GossowやAlissa White-Gluzと比べると地味に見られることがある。だがそれは誤解だ。

Liiva独自の荒削りで低域に沈み込むデスヴォイスは、初期Arch Enemyの楽曲が持つ「湿った翳り」と完璧にマッチしている。技巧でねじ伏せるのではなく、楽曲の空気に溶け込むヴォーカル。「Burning Bridges」のサウンドはLiivaの声があって初めて完成している。

彼は2000年にバンドを去り、その後Hearseなどのバンドで活動を続けた。解雇だったのか離脱だったのか、真相はいまだに曖昧なままだ。いずれにせよ、彼がいなくなったことでArch Enemyのサウンドは別の方向へ舵を切ることになる。

アルバム「Burning Bridges」の全体像

「Burning Bridges」は全8曲、収録時間約36分。コンパクトだが密度が高い。

前作「Stigmata」よりプロダクションが洗練され、MichaelとChristopherのツインリードギターがより前面に出てきた。ヘヴィさとメロディーのバランスはArch Enemyのディスコグラフィーの中でも特に理想的な水準に達しており、「Johan Liiva時代の最高傑作」と評されることが多い。

The Immortal

アルバムのオープナーにして、Arch Enemyを代表する楽曲のひとつ。

イントロのリフが鳴った瞬間から「来た」という感覚がある。Michaelの刻みとChristopherのメロディーラインが絡み合い、Danielのドラムがグルーヴを支える。Liivaの咆哮が乗る瞬間の気持ちよさは格別だ。

ライブでも長年セットリストに組み込まれてきた曲で、Angela時代にも演奏されている。それだけこの曲自体のポテンシャルが高いということだ。ただ、Liivaバージョンの方が原曲の持つ重さと翳りが残っていてやはり好みだ。

Pilgrim

ミドルテンポで展開するこの曲は、アルバムの中で最も叙情的な側面が出ている。

Michaelのリードギターが奏でるメロディーラインはどこか哀愁を帯びており、「デスメタルバンドがここまで美しい旋律を弾くのか」という驚きがある。Carcass時代に培ったメロディーセンスがここに結実している。

Silverwing

疾走感とメロディーが高次元で融合した一曲。ツインリードギターの絡みが最も美しく聴こえる曲のひとつだ。

サイト内の関連記事として、このギターソロの弾き方を解析した記事も公開している。当時このリードラインをコピーしようとして挫折した記憶がある人も多いのではないだろうか。

Angelclaw

アルバム後半の核となる曲。ヘヴィなリフとドラマチックな展開が組み合わさり、曲の中で何度も表情を変える。

Danielのドラミングがこの曲では特に冴えており、単純にビートを刻むだけでなく、曲のダイナミクスを作り出す縁の下の力持ちとしての役割を果たしている。

Burning Bridges(タイトルトラック)

アルバムの締めくくりにして、このバンドの哲学が最も凝縮された曲。

「橋を燃やす」という言葉が持つ不退転の決意。過去を断ち切り前へ進む意志。Liivaの声がこの歌詞のテーマと驚くほど合致している。重く、暗く、しかし確固たる意志を感じる。アルバムの終わり方として完璧だ。

日本版ライブ盤「Burning Japan Live 1999」– これが素晴らしい

「Burning Bridges」の日本版に付属したライブボーナスディスク「Burning Japan Live 1999」は、正直なところスタジオ盤と同じくらい繰り返し聴いた。

1999年の日本ツアーを収録したこのライブ盤は、Johan Liiva時代のArch Enemyのステージを生々しく記録している。スタジオ盤の整然としたサウンドとは異なり、ライブならではの熱量と荒々しさがある。それでいてMichaelのギターは乱れず、楽曲の完成度がそのままステージで再現されている。

特に「The Immortal」や「Silverwing」のライブバージョンは圧巻だ。観客の反応も含めて、あの時代のArch Enemyがいかに日本のメタルファンに愛されていたかがわかる。

日本のメタルファンへの特典として付けられたこのライブ盤が、結果的にJohan Liiva時代の最良のドキュメントになった。後に単体でもリリースされているが、「Burning Bridges」の日本版と一緒に手に入れるのが本来の形だ。

Angela以降 — 耳に刺さる高音という壁

2000年、バンドはJohan Liivaに代わりAngela Gossowを新ヴォーカリストとして迎え入れた。

Angelaの登場はメタル界に衝撃を与えた。女性ながらあれほど激しいデスヴォイスを操るヴォーカリストはそれまでほとんどいなかった。「Wages of Sin」(2001年)はArch Enemyを世界規模のバンドへと押し上げ、商業的な成功を収めた。

ただ、個人的にはAngela以降のArch Enemyはあまり聴かなくなった。

理由は単純で、Angelaのシャウトに含まれる高域成分が自分の耳には少しきつく感じるからだ。好みの問題なので優劣ではないが、Johan時代のどっしりとした低域寄りのヴォーカルスタイルと比べると、自分のツボとは少しずれる。

2014年からはAlissa White-Gluzが加入し、さらにクリーンヴォイスも駆使するスタイルになった。バンドとしての幅は確実に広がっている。ただ、そちらの方向性はもはや別のバンドとして認識している節がある。

初期Arch Enemyが好きな人と、Angela/Alissa時代が好きな人は、かなり違う層なのではないかと思う。どちらが正しいということでもなく、単純に「自分はあの翳りのある初期サウンドが刺さる」ということだ。

まとめ — 25年後も手が伸びる理由

「Burning Bridges」を今聴き返すと、全く古びていないことに驚く。

MichaelとChristopherのツインギターが描くメロディーは普遍的な美しさを持ち、Liivaのヴォーカルはこのアルバムのサウンドに完璧にフィットしている。日本版ライブ盤と合わせれば、Johan Liiva時代のArch Enemyのすべてがここにある。

メロデスの文脈でAt The GatesやIn Flamesを聴いてきたなら、このアルバムも必ず聴いてほしい。同じヨーテボリの空気を吸いながら、少し異なるアプローチで同じ高みを目指したバンドの到達点がここにある。

日本版ライブ盤目当てで中古を探す価値は十分にある。

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